さわやかのハンバーグとブランドイメージ
この記事を書いた人
1976年 静岡県生まれ。CEO、ブランドマネージャー、ディレクター、コピーライター、日曜エンジニアと5足のわらじで活動中。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会『ブランドマネージャー1級資格』保有者。
夕方から貸衣裳ECサイトを運営するクライアントとの打ち合わせがあり、静岡市内まで行ってきました。
打ち合わせ後、静岡市内で夕食を済ませてしまおうという話になり、通りすがりの『さわやか』に立ち寄ることに。満席を覚悟していたのですが、早めに行動したのが功を奏したのか、スムーズに入店することができました。
『さわやか』は静岡県民なら知らぬものはいないローカルレストランチェーン。あの長澤まさみ様も御用達の県民食。静岡県民に「ハンバーグといえば?」と聞けば、大半の人が『さわやか(の、げんこつハンバーグ)』と答えるほど、強力なブランドなのです。
僕自身も、20年以上にわたって『さわやか』のハンバーグを食べ続けてきました。昨年受験したブランドマネージャー認定協会の1級試験では、『さわやかの新規事業』という架空の設定でブランド・ステートメント(ブランドの設計図)を作成するぐらい、親近感をもっているブランドです。
さわやかは、身近さという価値を失った
この『さわやか』ですが、もともと週末となれば満席は当たり前。多少待たなければ入店できない人気店でしたが、最近ではSNSやネットニュースで話題に上がることも多く、県外からもお客さんが殺到する「”超”人気店」になりました。
待ち時間も10〜20分ではなく、ディズニーランド顔負けの行列ができるのです。先日の10連休は衝撃的で、『さわやか御殿場インター店』で500分待ち(!!)を記録したのです。御殿場のアウトレットが近いとはいえ、これはもはや事件。駐車場は他県ナンバーで埋めつくされていたとか…。
さすがに他の店舗でこんな待ち時間になることはないと思いますが、それにしても最近の『さわやか人気』は異常だと思います。
僕にとって、『さわやか』は、家族や気のおけない友人たちと、気軽に外食を楽しむためのレストラン。いつ行っても変わらない美味しさと快適さがありがたい、そんなお店でした。そして『さわやか』は、20年以上にわたって僕にその価値を僕に与え続けてくれたのです。
この状態をブランディングの専門用語でいえば、僕の心のなかで「ブランド・プラス(プラスの印象をもったブランド)」になっている状態です。
ところが最近は、お店に行っても満席で入れないことばかり。他県からのグループ客、団体客が待合場所に溢れ、30分〜60分待ちは当たり前。もはや僕ら地元民が気軽に楽しめるお店ではなくなってきています。
何度となく行列に心をヘシ折られ、食べることを諦めているうちに、僕の心のなかの『さわやか』の印象は、「ブランド・マイナス(マイナスの印象をもったブランド)」に傾きはじめていました。
大好きだったはずなのに、「そこまでして食べたいと思わないよね」とか「地元のお客さんのこと、大事にしてないよね」なんてネガティブなことを言いはじめるようになっていったのです。
失うのは簡単、回復するのは大変
今日はたまたま平日の早い時間に行くことができたので、久しぶりにスムーズに入店することができました。名物の「げんこつハンバーグ」は相変わらず絶品で、店員さんの接客だって非常に丁寧です。
マイナスに傾いていたブランドイメージは回復の兆しを見せていますが、ブランドの印象は一度落ちてしまうと回復が難しいもの。地元の人が、週末の外食を気軽に楽しめるお店に戻らない限り、僕の心のなかの『さわやかのブランドイメージ』は根本的には解決しないでしょう。
好きだからこそ、厳しい言葉で締めました(関係者の方、すみません)。創業から40年以上、静岡県の人々に愛されつづけてきたお店です。ブランドの仕事をするものとして、これからの展開をしっかり見守りたいと思います。