「デザインの元データが欲しい」というクライアントに伝えたい話
この記事を書いた人
1976年 静岡県生まれ。CEO、ブランドマネージャー、ディレクター、コピーライター、日曜エンジニアと5足のわらじで活動中。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会『ブランドマネージャー1級資格』保有者。
今日はデザイン業界の人間なら誰もが経験しているであろう、アノ話をします。
納品後に「今後は自分たちで更新したいので、Photoshopで開けるデータを送ってください。あ、レイヤー構造そのままで…」みたいなことをおっしゃるクライアントがたまにいるわけです(すでに苦笑いしている同業者さんも多いのではないでしょうか)。
デザイン案件の一般的な成果物は、「完成されたデザインデータ(=編集できないデータ)」です。印刷物だったり、JPGだったり、PNGだったり、あるいはPDFだったりします。
その成果物を作りだす過程で使われる「PhotoshopやIllustratorで編集するためのデータ」、いわゆる『中間成果物』。それをぼくらは『元データ』と呼んでいるわけですが、これについては、特約がない限りはデザイン会社に所有権と著作権があります。
法律面でいえば、僕らは元データをクライアントに提供する義務はないのです。
元データはデザイン会社の資産である
法的な解釈はさておき、クライアントから「元データがほしい」と言われると、僕はモヤっとします。
なぜなら、元データの中にはデザイナーの技術・アイデア・ノウハウ・企業秘密が詰まっているから。つまり、すべてのデザイン会社にとって元データは重要な資産であり、商売道具だということです。
「次からこっちで編集したいので、データちょうだい」と言われて、「はい、わかりました〜」と簡単に渡せるものではありません。どうしても欲しいと言われれば、そこに詰まっている技術やノウハウと、そのデータをもとに将来的に得られるはずだった利益のすべてを金額に換算して、有償提供するしかありません
元データを入手することで、それを二次加工した新しい商売ができてしまうことだってあります。それがまかり通っては、優秀なデザイナーは世の中からいなくなってしまいます。
そして、デザインの更新や増刷という仕事が、デザイン会社の貴重な収入源であることも理解していただきたいのです。
クライアント側も悪意をもって「元データをよこせ!」と言っているわけではないので、僕らとしてはとにかく啓蒙していくしかないのかなぁと思っています。もちろん契約段階での説明も重要ですが。
そんな感じで、3連休前だというのに何だかモヤモヤしています。あまりにモヤモヤするので、気分転換にちょっと遠めのローソンまでアイスコーヒーを買いに行きましたが、いつも買っているセブンイレブンのコーヒーのほうがやっぱり美味しいですね。モヤモヤ…。