「きれいなデザインでは売れません」という制作会社には要注意

こんにちは、岡田です。
お盆休みということで、普段の業務ではなかなか手の回らないことをやろうと思っています。その一環として、本日は同業者のwebサイトなどを巡回しています。おおむね良い意味で刺激を受けているのですが、なかには同業者だけにモヤモヤした思いを抱くこともあります。

web制作会社の選び方

ネット通販事業に参入することが決まってecサイトを新規構築する、あるいは、既存のecサイトのリニューアルを行うといった場合、ほとんどの企業はインターネットで『web制作会社』を探します。
インハウスデザイナー(メーカー企業などに勤務する社内デザイナー)がecサイト制作に携わる場合もありますが、ecサイトは一般なウェブサイト(コーポレートサイトや採用サイトといった類のもの)に必要な技術のほか、さらに専門的な知識とノウハウが求められるため、すべてを内製する企業は少ないのではないでしょうか。
ウェブ制作という事業は、比較的に参入障壁が低いと言われており、その証拠にネットで検索すれば星の数ほどの制作会社やフリーランサーがヒットします。デザイン専業の会社のほか、広告代理店やシステム開発会社などもweb制作のサービスを提供していることもあるため、我ながら競争の激しい業界に足を突っ込んでいるなと感じます。
そうなると、これからサイトを構築しようという企業の担当者は『いったい、どこに頼んだらいいの?』ということになるでしょう。制作会社を選定するためのキーポイントはいくつかありますが、とくにecサイト制作というジャンルについて注意すべきことをひとつご紹介します。

「きれいなデザインでは売れない」という風潮への疑問

きれいなデザインでは売れません!みたいな刺激的なキャッチコピーは制作会社の常套句ですが、私個人の考えとして、この手のキャッチコピーを使う制作会社は地雷率が高いと考えています。
誤解のないように言っておきますが、たしかに『売れるページ』と『きれいなページ』は本質的に違います。ただ、このようなキャッチコピーを掲げている会社のwebサイトや制作事例を見ると、きれいなページを提供する技術や姿勢のない制作会社の言い訳のように見えてしまうのです。(かつては私たちも同じように言い訳に逃げた時期がありました…)

売れるページが求められる理由

楽天やYahooショッピングといったショッピングモールでは、商品ページに情報を詰め込んで、見た目も派手に作ることが『売れるページ』の定石とされています。
イオンなどの実店舗型モール同様、楽天などのショッピングモールで成功するためには、モール内を回遊する人々を大声で呼び込み、隣のショップに逃さないための接客が必要になります。いわば、すべての商品ページがランディングページの役割をもち、一撃必殺でお客様を口説き落とさなければならないのです。
このような理由から「ギラギラした派手なページ」を作ることはデザイン戦略のひとつの正解ですが、そこに理論や技術が無用なのかといえば、決してそんなことはありません。

きれいなページの定義

『きれいなページ』を『技術だけに頼ったページ、見栄えがいいだけのページ、おとなしいページ』と同列に語っている制作会社が多いことはとても残念です。
ページを見てくれるエンドユーザーへのおもてなしの心をもって、ページの上から下まで、ちいさなバナーの細部や文字の行間調整まで、ただの1秒も手を抜かずに作成すれば、ページ内の情報量やデザインのテイストにかかわらず、必然的に『きれいなページ』になります。
それを否定するような制作会社に、あなたは仕事を頼みたいですか?

ecサイトにおけるデザイナーの役割

これは私の個人的な意見ですが、そもそもデザインとは「目の前の売上を作るためだけの手段」なのでしょうか。
目の前の売上も立てつつ、さらに長期的にブランドを築きあげていく、その会社が100年後もお客様から愛され続けるための役目のほうが大きいと私は考えています。つまりは「ギラギラ派手に売り込まなくても、お客様に買っていただけるような信頼を構築すること」がデザイナーの役目だと思うのです。
そして、100年先も愛されるブランドを築いていくためには、企業の世界観や空気感といったカタチのないものを、デザインを通じてお客様に伝えていただく必要があります。
そのためには、デザインの基礎であるトーン&マナーの遵守はもちろん、バナーひとつを切り取っても「これはあのお店のデザインだ」とお客様にわかっていただくためのデザイン理論と技術が必要になります。
しっかりしたデザイン理論と技術を学んだデザイナーが『売れるページ』を考えたとき、そのデザイナーは『きれいなページ』を否定するでしょうか、それとも肯定するのでしょうか。私は後者であってほしいと願っています。
それでは、また。
今日の写真:刺激的なキャッチコピーの功罪
2017.08.11

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