【共感デザインラボ】ECサイトのバナー研究 vol.3

共感デザインラボ担当の栗田です。

前回のラボでは、第1回目のデザインに足りていなかった「顧客のニーズ」について深く考え、今回は同じ失敗を繰り返さないために、下記のフレームワークを用意し、流れに沿って制作をしました。

結果、フレームワークを用意した甲斐あり、小手先のデザインではなく、コンセプトに沿ったバナーを制作することが出来ました。
今回はこの考え方に慣れるため、引き続きフレームワーク使用して制作をしていきます。

それではさっそく新しいお題に挑戦していきましょう。

前回と同様に架空クライアントにインタビューを行い、下記のように当てはめていきました。

Q1.クライアントは誰か?(Who)

M衣装店
(成人式振袖や七五三衣装、訪問着など、主に和装の販売・レンタルを行うお店)

Q2.何を作るのか?(What)

【バナーの種類】
・ECサイト内の通常画像バナー

【目的】
・「初詣衣装」という新しい需要の取り込み
・新規顧客の獲得

【仕様】
・サイズは360px×374pxで制作。
・ファイル形式はJPEG。

【リンク先の概要】
・「2020初詣」のキーワード検索結果ページ
(→2020年の初詣衣装を検索したページ)

【製品・サービス特徴】
・振袖や訪問着などの和装のレンタル(初詣に着ていく和装)
・安くて品質が良い。
・お客様からのお店の評価が高い。
・大手の呉服店で売っているような仕立ての良い高級衣装。
・フルセットで借りることが出来る。
・正絹の着物も取り扱っている。
・年末年始も営業をしている。
・レンタルの枠が空いていれば直前予約も可能。
・専門業者からアンティーク着物を買っている。(子供用のみ)
・コーディネートがハイセンス。

【想定しているターゲット】
・初詣に着る着物に興味があるが、手を出せていない20代女性
(中でも25歳前後がコアターゲット)

【ペルソナ】
A子さん(25歳女性)。独身で一人暮らしをしている。初詣には毎年私服で行っているが、今年は令和初の初詣のため、友達と何か思い出に残るようなことをしたいと思い、一緒に着物を着て行こうと決めた。
しかし、和装についてあまり詳しくないため、フルセットで借りることができ、初詣に着ても良い着物なのか分かる物がいいと思っている。
一人暮らしで自由に使えるお金が少ないため、なるべく安く借りられるものを探しているが、粗悪な物は選びたくない。

Q3.どこに設置するのか?(Where)

ECサイトのトップページ

Q4.いつまでに完了するのか?(When)

2019/12/1には掲載予定。
(11/30までに要納品)

Q5.なぜ必要なのか?(Why)

【クライアントの想い】
・年々日本人が着物を着なくなっており、着物屋として危機感を感じている。
・成人式や七五三といったお祝い事で自然とお客様がついて来ていたが、年々減って来ているため、新しい需要を打ち出したいと考えている。
・着物屋だからこそ、大事な日にちゃんとした良い物を着て欲しい。

【クライアントの狙い】
・「あの時着て良かった!」と思ってもらえるよう、品質の良い物を販売し、来年度も借りてくれる”リピーター”を増やしたいと思っている。
・初詣用に着物を借りる人はほとんどおらず、全体の売り上げの10%にも満たないため、最低10%は達成したいと思っている。
・成人式の前撮りと七五三が終わり、ひと段落した12月が閑散期になるため、この間に売り上げを伸ばしたい。
・会社を成長させていくために、在庫の回転率を良くしたい。

上記のようにフレームワークに当てはめることで、この案件の最大のポイントは
「あの時着て良かった」と感じてもらい、良い思い出となることで、来年度以降もリピーターになってくれること と考えました。

そこから導き出したクライアントが解決すべき課題を一言で言うと、
初詣で思い出を残したい女性に「着物を着る特別感」を訴求し、ページに誘導するです。

そこで、この課題を解決するために、2案仮説を立てました。

【A案】
”令和最初”という事に重点を置くことで、プレミアム感を強く感じてもらう。
また、記念日などに着物を着る「特別感」を訴求することにより、自分も特別感を味わい、思い出として残したいという欲求に繋がる。

【B案】
「友達との思い出作りに」という風な具体的なシチュエーションをあげることで、身近に感じてもらう。
「友達と」というキーワードに重点を置くことで、思い出を共有できる嬉しさ、一緒に着て行った時のワクワクした気持ちを感じてもらい、「自分も友達と着てみたい!」と憧れを持ってもらう。

この仮説を元にデザインコンセプトを考えました。

    【A案】
  • 「2020年はプレミアムな初詣に!」といったニュアンスのコピーを使う。
  • プレミアム感を感じてもらえるようにゴールドや黄色などの色を使う。
  • 「令和初」というキーワードを目立つように配置する。

  • 【B案】
  • 「友達との思い出作り」という楽しいイメージが伝わるように、明るい色味を使い、装飾などで遊びを加える。
  • 自分が着て行った時のイメージを膨らませやすくするため、女性数人と神社の写真を使用する。
  • 「友達と特別な思い出を残しませんか?」という風なニュアンスのコピーを使う。

そして、出来上がったデザインがこちらです。

A案

【コンセプト】
プレミアム感や特別感を感じてもらうデザイン

特別感を感じてもらうため、お正月感のある赤、黄、白を使用しました。
また、「令和初」の文字を強調することで、記念日だということをより意識してもらえるようにしました。
お正月と伝わるように、文字の背景を絵馬のような形にしました。

B案

【コンセプト】
友達との思い出作りという楽しさが伝わるデザイン

笑顔の女性数人の写真を使用することで、友達との思い出作りができるというベネフィットを訴求しました。
明るい色味を使い、文字などで遊びを加えることで楽しさを表現しました。

先輩方からのアドバイス・指摘

出来上がりを先輩デザイナー達に見せたところ、下記のような総合的なアドバイス・指摘をもらいました。

    【ペルソナ】
  • 情報が足りていないため、人物像がはっきり見えない。
    ・性格
    ・職業
    ・自由に使用できるお金(趣味や衣服など)
    ・初詣に着物を着て行こうと思ったきっかけ など

  • 【解決すべき課題・仮説・コンセプト】
  • 「特別感」と「身近」は真逆の意味だからB案はデザインに一貫性がない。
  • 解決すべき課題が簡潔でないため、「How」が絞れない。
    →そもそもこの案件の最大のポイントは、「新しい需要の打ち出し」ではないか?

  • 【デザイン】
    A案
  • キャッチコピーが説明文のようになっているため、先が見えてしまう。ワクワクしない。
  • フォント選びをもっと考える。
    →フォントで無理に和風にしなくても良い。

  • B案
  • メリハリをつける。
  • フォント選びをもっと考える。全て同じものを使ってしまっているため、何を強調したいのか分からない。
  • 着物屋なので写真の着物が隠れすぎないようにする。

まとめ

今回フレームワークの考え方に慣れていくことはできましたが、肝心な解決すべき課題がずれてしまっていました。
正解が無いとはいえ、冷静にもう一度考えてみると、クライアントの想いを無視してしまっていたと気づき、反省しました。

常にクライアントの立場になり、何故このバナーを必要としているのかを深掘りしていくことで、本質を引き出すことが出来ると改めて分かりました。
この反省を生かし、次回からは「Why」をもっと考えていき、課題を見誤らないようにしたいと思います。

2019.12.04

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